朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「………」
「………」
沈黙に包まれる。
「……咲桜。なにか危ないことがあるのか?」
俺から話しかけると、咲桜は少しだけ顔を浮かせた。
何か言いたそうに唇が揺れたが、音にはならない。
そして、軽く首を横に振った。
テーブル席に対面で座っているから、机の影になって見えないけど、膝の上で拳を握っているように見えた。
向かい合わせ。
手を伸ばせば咲桜の頬には触れられる。
……咲桜の方へ向かって手を差し出す。
けれど、咲桜には触れることなく机の上に落ちた。
「咲桜。……なんでもいいから話してくれないか? お前に無視されるのはきつい」
「む、無視なんてしてないっ」
「じゃあ、なんでこっちを見てくれないんだ? 俺がなにか嫌なことをしてしまったか? あるなら言ってくれ。……怒らないから」
咲桜の心が知りたい。
その中で自分は、咲桜に対して失態を犯したのだろうか。
だから咲桜はこんな不安そうな顔をするのか?
非が自分にあるならば謝って解決したい。
咲桜の心が不安になっているのは、嫌だ。
「……昨日、頼に見られたみたいなの」