朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
side咲桜15
「咲桜―」
頼より先に教室にいた私は、気だるげな声に呼ばれて、びくりと肩を震わせた。
「あ。おはよう。どうした?」
平静を装うけど、声の音程がおかしい気がする。
「咲桜の彼氏、逢わせてよ」
私の机の前まで来てそんなことを言うもんだから、驚きで硬直してしまった。
代わりに反応したのは、登校していたクラスメイトたちだった。
「えーっ、咲桜彼氏出来たの⁉」
「誰⁉ 藤城の人っ?」
「わー、おめでとーっ」
「華取、マジで彼氏いんの⁉」
「なんだよ、日義は知ってんのか?」
わっと群がってきたクラスメイトに泡喰った。
まさかバカ正直に「神宮先生」なんて言えるはずもなく。