朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「……咲桜にべた惚れしてる人だよ。咲桜のこと一番大事にしてくれる」
「ふーん」
自分から訊いておいて、気のない返事だった。
「じゃ、今度逢わせてよね」
ひらりと風に載せるみたいに簡単に言葉を残して、頼は自分の席へ行ってしまった。
私が是非の答えも出す前に。
「咲桜、大丈夫?」
笑満が身を屈めて様子をうかがってくる。
片手でこめかみを押さえながら肯いた。
本当は大丈夫じゃない。でも、欠片くらいは大丈夫だった。
昨日、龍生さんのお店で流夜くんと逢えたから。