朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
電話では駄目だった。逢いたかった。
直接その瞳を見たかった。体温は触れてしかわからない。
腕の中に置いてほしかった。
……総て、話すべきなんだと思う。
流夜くんはただの教師ではなく、偽婚約者だけではなく、恋人。
頼のことは、私が未だに時々困ることではあるから――完全に終わった過去のこととは言えないから。
話しておくべきなんだと思うけど……どうにも言いづらい。
むしろ言いたくない。
やましいことがあるから、ではなく、単に話したくないという気持ちしか理由はない。
どうしたもんか。
「咲桜、結構苦労性だよね」
「……うん」
断片的に、頼のしたことを知っている笑満は気遣いの眼差しをくれる。
頼の友達として、「そんなことないよ」と否定することは出来なかった。
実際苦労している。