朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
笑満はまた、膝に顔を埋めた。
気持ちばかりが焦って頭が追いつかないと言いたいようだ。
「大丈夫。もし傷つくことなら、遙音先輩は言わせないと思うよ。さっき『笑満ちゃん』って呼んだそれ、笑満にそう呼ぶ距離はゆるしてるってことじゃない? 少なくとも、私よりは笑満を近くにしてると思う」
近づく距離は、ゆるされた分しか近づけない。
どんなに足掻いたって、それを決めるのは相手だ。
「……なんか、咲桜が成長してる……」
笑満は透明な瞳を何度か瞬かせた。
「そう? だったらそれは、流夜くんのおかげだ」
距離の感覚は、流夜くんが教えてくれた。
額と額がくっつく距離をゆるしてくれるなら、なんだって、不安も悩みも、楽しい話も聞くからおいでと言ってくれた。
その答えを聞くと、笑満はふわっと笑った。
……まだ、涙は薄ら見える。