朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
思わず、ここが学校であることも忘れて叫んだ。
冗談じゃない!
咲桜が振り向いた。すぐに距離を詰めた俺は、咲桜の腕を摑んで引き寄せた。
「りゅ――先生っ?」
名前を呼ぼうとして、現実に気づいたようだ。
その呼ばれ方に俺もはっとする。
「日義――くん、何してるんですか」
変な言い方になってしまったが、とにかく咲桜を日義から離さないと。
「いやいや先生――やっと顔を見せてくれましたね」
浮かれたような声に、俺が正面から見た日義は瞳をきらめかせていた。
……日義?
なんでそんな嬉しそうな顔をする。
こんな生気あふれる日義の顔を見たのは初めてだった。
「俺は別に咲桜をどうこうしようなんてないですよ。ただ、学外での先生に逢いたかっただけで」
キスなんてしてません。と、腕を広げてみせた。
……やっぱりばれていたか。