朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
制服を直しながらぼやく。
咲桜は答えを有していなかったようで、首を傾げた。
「日義の言うそれは左右対称のことみたいだな」
「……シンメトリー?」
回転椅子を廻して、遙音の方を見る。
「人間の体躯(たいく)の構造は差があるからな。完全な左右対称は珍しいものだ」
「じんぐーがそれだってことか? 咲桜も?」
「そう……なのかな?」
確証のない咲桜は曖昧に返す。
俺はため息をついて空(くう)を見た。
「正直、ぱっと見ただけでわかるものじゃない。俺も自分のことなんて知らねーけど、シンメトリーは確かに芸術家には格好のネタだろうな」
芸術評価、というものだ。
「えーと、なんだ? つまり、神宮と咲桜は身体が左右対称で、あのガキはそれを見抜いて写真に撮りたいと?」
「先輩! ここですかっ? まだ撮り足りないですよ!」
「ぎゃーっ!」