朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「そうだな……見ていて飽きないな」
「へー?」
「飽きないついでに構いたくなる」
「……ほー」
「あと、言動がいちいち愛らしい。触ったままでいたくなる」
なんか咲桜に触れていると安心するというか……和んでしまう。
神経を尖らせる仕事が本業だから、気を張っていることが多いんだけど……咲桜の顔を見ただけで、それが緩む。
咲桜がここにいてくれる間くらいは傍にいたいんだけど、私事は山積みだ。
弟が手分けしてくれているけど、咲桜を構ってばかりいられないのも実情。
でも、帰れ、なんて言いたくない。
時間と在義さんが許す限り、一緒にいたい。
俺が私事を始めると、咲桜は少し離れる。
人目に触れていいものではないことを、刑事の娘としても承知しているんだろう。
だから、ひと段落つくごとに充電させてもらう。
手を差し出すと、素直にその手を重ねてくれる。
そのまま、なんとなくローソファに並ぶ。
その時間が、今の俺の一番大事なものだ。
「……りゅう、それって……」
「あ?」
聞こえた降渡の声が震えていた。
なんだ?