朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
今更教師として取り繕うところもないので、気取らずに声をかける。
「少し……話し足りないことがあって来ました」
そう言う声は間延びしていて、やはりいつも寝こけている日義だった。
部屋に入れると、俺からまず気になったことを問うた。
「どうやってここを?」
まさか咲桜の危惧通り、尾行(つけ)られていたのだろうか。
そんな気配を最近感じたことはなかったけど……。
「なんかのときに……職員名簿の住所見たような気がして……。薄ら憶えてました」
「………」
故意に見たわけではないことを薄ら憶えていたのか。
学校でも大概寝ているくせに首席とか、遙音とは違って秀才ではなく天才タイプのようだ。
キョロキョロしている日義にも、一応茶を出す甲斐性は出来るようになった。
その辺りは礼儀だと咲桜に諭されたから。