朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「………」
咲桜の話。俺の知らない過去の咲桜。
日義だけが知る咲桜。
……イラッとする。
「小学校で咲桜を見つけたとき、昼間みたいな勢いで攻めました。あんな完璧な体躯の奴、見たことなかったから。まあ――小学生の体型ですからどう変わるって言われたら証明は難しいですけど、咲桜は完全な左右対称でした。先生も」
「……どういう目をしているんだ」
本当にぱっと見でわかるのか。
凄まじく精密な目や耳を持っている弟はいるけど、あれは体温が見えるとか言っているので、日義とはタイプが違うのだろうか。
日義はおどけてみせた。
「こういう目です。そんときの勢いで、ほかの生徒や教師にはドン引きされて。一番俺を気味悪がっておかしくない咲桜が傍にいてくれたの、すげー嬉しかったですね」
……咲桜の言う責任、か。
「どんな気持ちでも、俺が孤立しなかったのは咲桜のおかげです」
「………」
どうやら気づいているようだ。
咲桜が全く必要のない責任を感じていることを。