朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】


「そのうち笑満もいて。……大事ですね、やっぱり」
 

なくせない。
 

また、口の中に消えた音。


嫌なことに、長年の成果で過敏になった耳はそれすら拾う。


「先生。どうして咲桜と婚約なんですか? 付き合ってるならまだしも」
 

まだしもの内容も危なっかしいものだ。
 

考えたが、咲桜が最初に話しておきたいと提示した人物の中に、伝える方ではなかったといえど名の挙がった人物だ。


気になる対象ではあるのだろう。


「咲桜の父と、俺の知り合いの縁だ。今は一時的な咲桜の虫除けのための婚約。でも、許される頃になったら正式に結ぶつもりでいる」


「ああ……政略観点ですか」
 

日義は少ない言葉で納得した。


在義さんの職業は知っているだろうし、元来呑み込みの早い頭なのだろう。

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