朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「今日は箏子母さんがいるから帰ってからにするわ。でも、ちょっとお手伝いして、いただいていこうかな」
「いいよー」
そんなやり取りがあって、咲桜と朝間先生が揃ってキッチンへ立つ。
手伝いをする、と申し出でると、朝間先生に睨まれた。
咲桜との時間を邪魔するなと言いたげな顔だった。
咲桜も、「あっためなおすだけだから」と言って断ってきた。
二人が並ぶ姿を見る。
愛子の方が年上だけど、咲桜は朝間先生を母、愛子を姉のような感覚で懐いているように見える。
「女性の後ろ姿でにやつかないでください」
「俺が見てるのは咲桜だけです」
にやついてもいない。
言い返すと、やはり厳しい瞳が返ってくる。
この人も結構な二重人格じゃないか?
皿に料理を分けた朝間先生が、咲桜に向き直る。
「咲桜ちゃん、神宮さんに変なことされそうだったら大声出すのよ? うちまで聞こえるから駆けつけるわ」
とんでもない助言を。
たぶん、咲桜の関係で頭を抱えるのは愛子より朝間先生の方だ。