朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「……なんでそんな格好する」
「諸事情により」
私は、流夜くんに背中は向けないけど、九十度の方向を見て正座した。
やっぱりどうにも正面切れない。情けない。
しかし流夜くんは、それがお気に召さないらしい。
「………こっち向け」
「勘弁してください」
「なんで」
「私の心臓に訊いてください」
「……わかった」
ぐいと、腕を引かれた。
そのまま、背中に耳をつけられた。
「な、なあっ⁉」
「お前が言ったんだろう、心臓に訊けと」
「そ、そそそういう⁉」
「本当どうした。心臓は答えてくれない」
やっと、耳を離してくれた。
「咲桜?」
そして真正面から見られて――見られて、しまった。
「――咲桜⁉」
煙吹いた。