朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】


「……なんでそんな格好する」


「諸事情により」
 

私は、流夜くんに背中は向けないけど、九十度の方向を見て正座した。


やっぱりどうにも正面切れない。情けない。


しかし流夜くんは、それがお気に召さないらしい。


「………こっち向け」


「勘弁してください」


「なんで」


「私の心臓に訊いてください」


「……わかった」
 

ぐいと、腕を引かれた。


そのまま、背中に耳をつけられた。


「な、なあっ⁉」


「お前が言ったんだろう、心臓に訊けと」


「そ、そそそういう⁉」


「本当どうした。心臓は答えてくれない」
 

やっと、耳を離してくれた。


「咲桜?」
 

そして真正面から見られて――見られて、しまった。


「――咲桜⁉」
 

煙吹いた。

< 32 / 336 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop