朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「………」
笑満ちゃんが俺の護りを出て行こうとするのを、その手首を摑んで止めた。
すると笑満ちゃんは驚いたように振り返る。
「あ――ぶない、んじゃないか?」
小声で言うと、笑満ちゃんはふわっと笑った。
「大丈夫。あんなんでもあたしの友達だから。……少しだけ、行ってくるね」
その言葉は、まるで帰る場所は俺のところだと言うようで。
……俺は、少し悔しい気持ちを抱えながらも手を離すことが出来た。
「バカだねえ、あんたは」
日義の前に立って、笑満ちゃんは毒づいた。
「ごめん……」
「あたしはいいよ、何も被害ないし。ただ、咲桜にはちゃんと謝っておきなよ。あんたが先生のこと追っかけまわそうとしてるの知って、必死に阻止しようとしてたんだから」
「うん……」
「……咲桜、今やっと自分のこと肯定出来てるの。自分の命とか……先生のおかげで。……あたしにもあんたにも適わなかったこと」