朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
流夜くん、力技に出た。
右肩を押さえつけ、左頬を捉える。
嫌でも天井を向くしかないようにされ、見下ろされた。
は、迫力!
今度はぎゅっと瞳を閉じた。
や、やっぱり真正面から見るには素敵すぎて――私が慌てる理由こそ、流夜くんにとってはトンチンカンだったと次の言葉で気づかされた。
「言っただろう、俺の現実は目を背けられない。見ない振りもなかったことにも出来ない。俺はその過去の上に生きている。――俺から目を背けるんだったら、今のうちに俺に関わることをやめろ。愛子や在義さんにも言って、偽婚約も解消する。お前を不用意に傷つけたくはない。引き返せるうちに、お前は普通の幸せの方へ行け」
「―――」
どうか、普通の幸せを生きてくれ。
そんな風に聞こえた。