朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
流夜くんの現実。家族を殺され、犯人は未だ捕まらず、家族はなく生きて来た。
だから、その話を初めて話した夜に――
私は、言ったのだろう。
でも、ね―――?
「やだ」
あのときと同じように真っ直ぐに見あげると、流夜くんは困ったような顔をした。
「ごめんなさい……」
私は、今度はしょげて目線を彷徨わせる。
流夜くんを傷つけるようなことをしてしまった。
流夜くんは、普通の幸せは自分のところには、ないと……思って―――
「そんなこと、ない」
そっと流夜くんの手が離れ、今度は手のひらを上にして差し出された。
流夜くんが許してくれたのかと少し迷ったけど、その手を取ることは当たり前な気がする。
そうすると、流夜くんは目を細めた。
「かかわるな、なんて言わないで……。わたし、りゅうやくんの家族になるって言ったの、まだ果たせてない……」
「じゃあ、顔あげて」
俯く私の顎に手を添えられて、真っ直ぐに見上げた。
やば……なんか泣きそう……。
流夜くんが優しい顔をしているから。