朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「なに? 落ち込んで。咲桜ちゃん怒らせでもした?」
ファイルの端を肩に載せて、斜めに見てくる吹雪。相変わらず鋭いな。
「怒らせた……。眉間に拳喰らった」
「どんだけ怒らせたの⁉ あの子がそんなことするって! あー、それで落ち込んでるわけ? 仲直り出来てないって」
吹雪にしては珍しく、目を剥いて驚いていた。
「あ? いや、殴られて離れたら怒りは収まったようだ」
「殴られて離れた……? なに、流夜」
じとっとした瞳で見られた。あるいは軽蔑の視線。
「咲桜ちゃんに手ぇ出したわけ? 在義さんに殺されるよ」
「………」
即座に反論出来なかった。
手を出した――のは本当だ。
抱きついて抱きしめて抱き寄せたから。
でも危険なことはない。……はずだ。