朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
『流夜くんだよね? わざわざ電話して謝るようなことを……?』
「………」
底冷えのする異端の刑事の声に、凍り付いた。
取調室にぶち込まれた気分だ。
「あ、あの在義さん――」
『なんだい?』
『だから返してーっ』
咲桜の声は一切無視されている。
はっとした。咲桜が言っていたことを思い出したのだ。
『在義父さんや夜々さんに怒られてもいいとか――』
言ったそうだ。自分は。
たぶんそれは本心で、咲桜を抱きしめられるくらい傍にいられるなら、在義さんに怒られるくらいどうってことない。
ただ、在義さんの怒りを買って咲桜に逢うことが出来なくなるのが嫌なだけで。
その仮面が、在義さんに対して萎縮するという方面で出ていた。
今は?
「すみません、在義さん」