朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
『……私に謝ることをしたのか?』
「はい。なにをしたかは言えませんが、在義さんと咲桜に誠実を貫くなら、俺は謝らねばなりません」
さすがにバカ正直には言えなかった。
咲桜がいてくれるだけで眠れる、それは誰にも知られたくないから。
咲桜しか知らなくていいと思う秘密。
在義さんはしばらく黙っていた。沈黙が耳に痛い。
『……君のことだ。犯罪じみた真似はないとは思っている』
「はい。それは誓えます」
今のところ、ですが。
心の中だけで付け足した。
『逢おうと思って逢えない場所にいるわけじゃないだろう。こんな遅くに電話しないで、直接逢って話しなさい』
「……はい」
逢おうと思って逢えない場所に、在義さんの妻はいる。
今の言葉が、電話を奪ってまで言いたかったことのようだ。