朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】


「……お前が言ったんだろ」
 

なんでこいつの発言は滅茶苦茶なんだろう。いつも。
 

けど、なんだか本気で真剣に言ってくる。


「俺らはな、咲桜ちゃんを在義さんの娘として可愛がっても、嫁にやりたくねーとかいうレベルで見ねえよ」


「……俺だけ感染してるのか」
 

くそっ、いつもつるんでいるこいつらだけど、二人だけ免疫でもあるのか。


俺の返事に、降渡は今度、可哀想なものを見るような瞳をし始めた。


「アホ。うつるわけねえだろ、そんな感情」


「だからお前が言ったんじゃねえか」


「んじゃあさ、在義さんは一度でも言ったのか? 咲桜ちゃんを嫁にやりたくないって」
 

………………。
 

在義さんは署内でも有名な親バカだけど、この前話して、一番に願っているのも娘の幸せだというのもわかった。


それを邪魔立てするような人ではないと思っている。
 

俺は記憶をめくるように宙を見つめ、呟いた。


「……言ってない」

< 7 / 336 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop