朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「……お前が言ったんだろ」
なんでこいつの発言は滅茶苦茶なんだろう。いつも。
けど、なんだか本気で真剣に言ってくる。
「俺らはな、咲桜ちゃんを在義さんの娘として可愛がっても、嫁にやりたくねーとかいうレベルで見ねえよ」
「……俺だけ感染してるのか」
くそっ、いつもつるんでいるこいつらだけど、二人だけ免疫でもあるのか。
俺の返事に、降渡は今度、可哀想なものを見るような瞳をし始めた。
「アホ。うつるわけねえだろ、そんな感情」
「だからお前が言ったんじゃねえか」
「んじゃあさ、在義さんは一度でも言ったのか? 咲桜ちゃんを嫁にやりたくないって」
………………。
在義さんは署内でも有名な親バカだけど、この前話して、一番に願っているのも娘の幸せだというのもわかった。
それを邪魔立てするような人ではないと思っている。
俺は記憶をめくるように宙を見つめ、呟いた。
「……言ってない」