演っとけ! 劇団演劇部
 そういえば『ロミオとジュリエット』ってどんな結末なんだっけ。確かロミオが棺に入っているシーンがあったような気がする。
 あれ、死んでいるのはジュリエットのほうだっけ。
 そもそも死んでるんだっけ。
 寝てるんだったか。毒リンゴは違うよな。7人の小人も出てこないはずだ。
 僕の頭の中でグリムとかアンデルセンが入り込み、そこにジュリエットに扮した遠藤さんが出てきて、どんどん滅茶苦茶になっていく。
 ああ、ロミオ様。目を覚ましてくださいませ。
 私のキスで目が覚めないのなら、私は劇薬か毒リンゴを飲んで後を追うでしょう。
 どうか、どうか目を覚ましてと遠藤さんの唇が薄目を開けている僕にドンドンと近づいてきた時
「やぁ、今日はぎりぎり起きてるんだね」
という声が聞こえ、僕は呪文書からなんとか目を離し、睡魔から脱出した。
「ここ何日か見かけたけど、いつも寝ていたから声かけられなかったんだ」
 僕に図書室で声をかけてくる人間なんて一人しかいない。
「あぁ、御手洗君。おはよう」
「なんだ、やっぱり寝てたのか」
と彼は声を出さずに笑った。
「目当てのまだ本は見つからないの?」
「いや、それはみつかったんだけどね」
 そのやさしい声がけにほろりと来た僕は、御手洗君に今までの経緯と今現在の問題を洗いざらい話していた。
 始めは誰でもいいから話を聞いてほしいというノリで語っていたけど、過去の出来事を説明しているうちに御手洗君に相談することがベストのような気がしてきた。
 もうこれ以上一般庶民の頭ではどう解決することも出来そうにないからだ。
 ここは優しさだけじゃなく賢い頭脳も兼ね備えた学校一の天才。『リアル出来杉君』という新しいあだ名がクラスに浸透しつつある御手洗君に恥を忍んで縋るしかない。
「んー、なるほどね」
 御手洗君は、少し考えた仕草をしたあと
「いいアイデアだとは思うけど、廃部にされた人たちのところを回るっていうのはあまりいい気がしないな」
 そこのアイデアは相田先輩だけど、僕も賛成したから言い訳できない。
「そもそも栄斗君がどうして演劇にそこまでこだわるのか? 僕にはそこが一番興味あるよ」
「それは…」
 
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