演っとけ! 劇団演劇部
チラシには『ぱパぱパ』というわけのわからないタイトルがデカデカと書いてあるだけで、内容の説明は一切されていなかったからだ。
小劇団の芝居というのは、チラシを見てもどんな芝居をやるのか想像がつかないものが多い。というのも常識だそうだ。畜生。
劇場についた二人が中に入っていくのが見えて、僕らも少し時間を置いてから慎重に潜入した。
(本当の)常識で考えれば、終わるまで外で待っているほうがアホの洸河に見つからないので安全なのだが、薄暗い場所で二人きりにさせるほうが危険だという判断が下され、僕らも入る手筈になっていた。それこそ目的地が決まっているのだから尾行なんかしないで簡単な変装した僕らが先に劇場に入っていればいいだけの話なのだけど
「尾行はロマンだ」
と言ってきかない相田先輩の主張を曲げることは出来なかった。(というより鼻から諦めていた)
作戦通り、前のほうに席を取った遠藤さんとアホ洸河の視界に入らないよう、僕と相田先輩は一番後ろの席に座った。
開演までにはまだ時間に余裕がある。
ほっと一息ついた僕は突然の尿意に襲われ、慌てて席を立った。
原因はわかっている。先輩から手渡されたコーヒー牛乳だ。先輩の助手(もしくは部下)として尾行には必要不可欠な小道具なのだそうだ。ちなみにアンパンはバックの中で今頃つぶれていることだろう。
(ふぅ)
これで洸河を引き入れることができなかったら、全く無駄な休日を過ごしていることになる。
憂鬱な気分を押さえ込みながら、僕が手を洗っていると、ふいに鏡にアホ洸河の顔が映った。
(えっ?)
それに驚いた僕は自然に目を逸らすどころか固まってしまっていた。
「あれ、君は…」
(しまった!)
「ははぁん。そうか、そうか」
洸河はすべてを理解したかのようにニヤニヤとしながら僕の顔を嘗め回すように見た。
まさかこんなミスを犯してしまうなんて。
小劇団の芝居というのは、チラシを見てもどんな芝居をやるのか想像がつかないものが多い。というのも常識だそうだ。畜生。
劇場についた二人が中に入っていくのが見えて、僕らも少し時間を置いてから慎重に潜入した。
(本当の)常識で考えれば、終わるまで外で待っているほうがアホの洸河に見つからないので安全なのだが、薄暗い場所で二人きりにさせるほうが危険だという判断が下され、僕らも入る手筈になっていた。それこそ目的地が決まっているのだから尾行なんかしないで簡単な変装した僕らが先に劇場に入っていればいいだけの話なのだけど
「尾行はロマンだ」
と言ってきかない相田先輩の主張を曲げることは出来なかった。(というより鼻から諦めていた)
作戦通り、前のほうに席を取った遠藤さんとアホ洸河の視界に入らないよう、僕と相田先輩は一番後ろの席に座った。
開演までにはまだ時間に余裕がある。
ほっと一息ついた僕は突然の尿意に襲われ、慌てて席を立った。
原因はわかっている。先輩から手渡されたコーヒー牛乳だ。先輩の助手(もしくは部下)として尾行には必要不可欠な小道具なのだそうだ。ちなみにアンパンはバックの中で今頃つぶれていることだろう。
(ふぅ)
これで洸河を引き入れることができなかったら、全く無駄な休日を過ごしていることになる。
憂鬱な気分を押さえ込みながら、僕が手を洗っていると、ふいに鏡にアホ洸河の顔が映った。
(えっ?)
それに驚いた僕は自然に目を逸らすどころか固まってしまっていた。
「あれ、君は…」
(しまった!)
「ははぁん。そうか、そうか」
洸河はすべてを理解したかのようにニヤニヤとしながら僕の顔を嘗め回すように見た。
まさかこんなミスを犯してしまうなんて。