演っとけ! 劇団演劇部
(このまま振り向かないで、校舎を出るのも一つの手だぞ)
そう思う僕の心を読むがごとく、相田先輩は僕の前に回りこんで
「山崎先生から聞いたよ。エイト君とは良い名前だ。八人兄弟の末っ子なんて設定だったりすんの?」
と、また意味不明なことを聞いてきた。
「そんなわけないじゃないですか」下駄箱で遮る腕をくぐりながら答える僕にしつこく
「じゃあ、弾よりも早く走れるとか」と後ろからついてくる先輩。
「あのですね…」
偶然とはいえ、あの一言でクラスに馴染めたことに感謝はしているものの、さすがに鬱陶しく思った僕が振り向くと
「伏せろ!」
と先輩は、突然僕の頭を押さえ込んだ。
「ナニを…」
「シッ!」
口元に人差し指を持っていき、顎で相田先輩が示した先には、遠藤さんと知らない男が向かい合って話していた。男のほうが必死で何か言っている。
どうやら遠藤さんを遊びに誘おうとしているらしい。とても無謀なことのように思うが男のほうもなかなか絵になっている。相田先輩と並ぶほどの180センチを超える長身。スラリとした体形はスマートというよりやや華奢なイメージを持たせるのは、整っている顔と遠藤さんにも負けないほどの色白なせいだろう。
見ようによっては美男美女に見えなくもないが、遠藤さんが戸惑っていることは一目瞭然だった。
「エイト君。彼女が相手の告白を断るまでにあとどれくらい時間がかかると思う?」
「まだ断ると決まったわけじゃ…」
僕は願望と反対のことを先輩に言いつつ、相手の男の様子を見た。
「どれくらい?」
「ちょっと待ってくださいよ」
僕は彼女の立場を考えた上で、冷静に男を観察する。
声はよく聞き取れないが、男は言いたいことを全て言い切ってしまっていて、彼女の反応が今ひとつだから、それでも畳み掛けるように話しているように見えた。
呼吸が続かなくなったのか、男のしゃべりが止まって一呼吸置こうとしている。
「あっ、今」
そう思う僕の心を読むがごとく、相田先輩は僕の前に回りこんで
「山崎先生から聞いたよ。エイト君とは良い名前だ。八人兄弟の末っ子なんて設定だったりすんの?」
と、また意味不明なことを聞いてきた。
「そんなわけないじゃないですか」下駄箱で遮る腕をくぐりながら答える僕にしつこく
「じゃあ、弾よりも早く走れるとか」と後ろからついてくる先輩。
「あのですね…」
偶然とはいえ、あの一言でクラスに馴染めたことに感謝はしているものの、さすがに鬱陶しく思った僕が振り向くと
「伏せろ!」
と先輩は、突然僕の頭を押さえ込んだ。
「ナニを…」
「シッ!」
口元に人差し指を持っていき、顎で相田先輩が示した先には、遠藤さんと知らない男が向かい合って話していた。男のほうが必死で何か言っている。
どうやら遠藤さんを遊びに誘おうとしているらしい。とても無謀なことのように思うが男のほうもなかなか絵になっている。相田先輩と並ぶほどの180センチを超える長身。スラリとした体形はスマートというよりやや華奢なイメージを持たせるのは、整っている顔と遠藤さんにも負けないほどの色白なせいだろう。
見ようによっては美男美女に見えなくもないが、遠藤さんが戸惑っていることは一目瞭然だった。
「エイト君。彼女が相手の告白を断るまでにあとどれくらい時間がかかると思う?」
「まだ断ると決まったわけじゃ…」
僕は願望と反対のことを先輩に言いつつ、相手の男の様子を見た。
「どれくらい?」
「ちょっと待ってくださいよ」
僕は彼女の立場を考えた上で、冷静に男を観察する。
声はよく聞き取れないが、男は言いたいことを全て言い切ってしまっていて、彼女の反応が今ひとつだから、それでも畳み掛けるように話しているように見えた。
呼吸が続かなくなったのか、男のしゃべりが止まって一呼吸置こうとしている。
「あっ、今」