演っとけ! 劇団演劇部
僕がそう言った直後、遠藤さんはごめんなさいと大きく頭を下げて去っていった。男は取り残されてその場に立ち尽くしている。
いつの間にか相田先輩のペースにはまっていた事に気がついて、我に返ったように振り返ると、そこにはもう誰もいなかった。
とにかく早く学校へ行かなければと思っていた僕は、次の日が土日で休みだということもすっかり忘れていた。月曜日からのほうがクラスに馴染みやすかったに違いない。そして、あんな不思議な登校初日を迎えなくてもすんだかもしれない。
とにかく昨日からツイてない。
賑やかな駅前で僕はポツンと一人佇んでいた。3分前に遊ぶ予定だった地元の友達から立て続けに電話があった。
僕と入れ違えで全員風邪をひいたらしい。
学校の乗換えで使うこの柏という街は遊び場所もお店もそれなりに揃っているが、カラオケもビリヤードもゲーセンも一人で行って面白いものじゃない。とっとと帰ろうとため息をつきつつ、駅に向かっているところで
「あっ、えーと、エイト君だよね」
全ての憂鬱が吹き飛んだ。
「ごめん。名前が印象的だったから、そっちしか覚えてなくて。馴れ馴れしく呼んじゃった…」
照れくさそうにそう言いながら立っていたのは私服姿の遠藤さんだった。
「いや、いいよ。栄斗で」
と僕は舞い上がるほどの気持ちを抑えつつなるべく気さくな感じで答えた。
「そう? じゃあ、エイト君で」
個人的には呼び捨てが好ましいくらいのつもりで言ったけど、やっぱりそこまでは通じなかったらしい。
(そうそうドラマなんて起こるはずがない)とか、彼女との会話も上の空で考えていると知らないうちにドラマが展開していた。
「本当に?」
彼女が手を合わせて喜んでいる。虚ろな記憶を辿ってみると、「うん」「そうなんだ」で構築された僕の返事で、いつの間にかこれから彼女と小劇場の芝居を見に行くことになっていた。
彼女の軽快な足取りについていきながら頭の中を整理してみると、彼女のお姉さんも演劇をやっていて駅から歩いて十分くらいのところにある劇場でもうすぐ舞台が始まるらしい。彼女のほうも中学校の友達と行く予定だったけど風邪で来られなくなってしまい、一人で行こうと思っていたところに偶然暇をしている僕に出会ったというわけだ。
いつの間にか相田先輩のペースにはまっていた事に気がついて、我に返ったように振り返ると、そこにはもう誰もいなかった。
とにかく早く学校へ行かなければと思っていた僕は、次の日が土日で休みだということもすっかり忘れていた。月曜日からのほうがクラスに馴染みやすかったに違いない。そして、あんな不思議な登校初日を迎えなくてもすんだかもしれない。
とにかく昨日からツイてない。
賑やかな駅前で僕はポツンと一人佇んでいた。3分前に遊ぶ予定だった地元の友達から立て続けに電話があった。
僕と入れ違えで全員風邪をひいたらしい。
学校の乗換えで使うこの柏という街は遊び場所もお店もそれなりに揃っているが、カラオケもビリヤードもゲーセンも一人で行って面白いものじゃない。とっとと帰ろうとため息をつきつつ、駅に向かっているところで
「あっ、えーと、エイト君だよね」
全ての憂鬱が吹き飛んだ。
「ごめん。名前が印象的だったから、そっちしか覚えてなくて。馴れ馴れしく呼んじゃった…」
照れくさそうにそう言いながら立っていたのは私服姿の遠藤さんだった。
「いや、いいよ。栄斗で」
と僕は舞い上がるほどの気持ちを抑えつつなるべく気さくな感じで答えた。
「そう? じゃあ、エイト君で」
個人的には呼び捨てが好ましいくらいのつもりで言ったけど、やっぱりそこまでは通じなかったらしい。
(そうそうドラマなんて起こるはずがない)とか、彼女との会話も上の空で考えていると知らないうちにドラマが展開していた。
「本当に?」
彼女が手を合わせて喜んでいる。虚ろな記憶を辿ってみると、「うん」「そうなんだ」で構築された僕の返事で、いつの間にかこれから彼女と小劇場の芝居を見に行くことになっていた。
彼女の軽快な足取りについていきながら頭の中を整理してみると、彼女のお姉さんも演劇をやっていて駅から歩いて十分くらいのところにある劇場でもうすぐ舞台が始まるらしい。彼女のほうも中学校の友達と行く予定だったけど風邪で来られなくなってしまい、一人で行こうと思っていたところに偶然暇をしている僕に出会ったというわけだ。