演っとけ! 劇団演劇部
「こんなにあるんだ」と感心して言うと
「みんな小劇団だけどね」
と教えてくれたが、どういう意味だかさっぱりわからなかった。
ブーッというブザーの音から始まるもんだとばかり思っていたら、徐々に客席の照明が消え代わりにBGM(これも後に『音響』ということを知る)が大きくなった。
完全に真っ暗で何も見えなくなり、音響が最高潮に達したところで、プツリと切れると同時に舞台の上だけがパッと明るくなった。
(うわっ!)
急に光が差し込んだ目の前に人が立っていた。思わず声が出そうになるくらい近いのに人が来ていたことに全く気がつかなかった。ステージには、目の前の役者を合わせて五人も立っていた。
その五人の役者の立つ位置ちょうどにスポットライトが当たっている。
(暗闇の中でどうやって移動したんだろう)
不思議に思っていると、また唐突に役者の一人が話し始めた。
ストーリーは一戸建ての家にルームシェアをしている社会人たちがいて、ある日拾った宝くじが大当たりして大騒ぎになるというものだった。
ずっと叫んでいるわけでもないし、わざとらしい動きがあるわけでもない。ヒラヒラのドレスを着ている人も、変な化粧をしている人も出てこない。それどころか何度も大笑いしてしまうようなエピソードがあったかと思うと真面目に物語が進展していき、時には涙を誘うような場面もあった。
僕はいつの間にかその演劇の中に入り込んでいた。客席の照明が明るくなって他の客が帰り始めても、僕はまだ動けないでいた。
「エイト君」
隣でアンケートを書き終わった遠藤さんが声をかけてたところで我に返った。
出口のところに遠藤さんのお姉さんがいて彼女は近づいて何か話していた。離れたところで様子を見ていると、彼女が僕を指差していたのでお姉さんに軽くお辞儀をした。お姉さんがニヤけているので多分彼女をからかっているのだろう。演劇を見る前だったら、お姉さんの反応や彼女の対応に気が気じゃなかったけど、今はそんな余裕はなかった。
演劇の余韻で支配されていたからだ。
「みんな小劇団だけどね」
と教えてくれたが、どういう意味だかさっぱりわからなかった。
ブーッというブザーの音から始まるもんだとばかり思っていたら、徐々に客席の照明が消え代わりにBGM(これも後に『音響』ということを知る)が大きくなった。
完全に真っ暗で何も見えなくなり、音響が最高潮に達したところで、プツリと切れると同時に舞台の上だけがパッと明るくなった。
(うわっ!)
急に光が差し込んだ目の前に人が立っていた。思わず声が出そうになるくらい近いのに人が来ていたことに全く気がつかなかった。ステージには、目の前の役者を合わせて五人も立っていた。
その五人の役者の立つ位置ちょうどにスポットライトが当たっている。
(暗闇の中でどうやって移動したんだろう)
不思議に思っていると、また唐突に役者の一人が話し始めた。
ストーリーは一戸建ての家にルームシェアをしている社会人たちがいて、ある日拾った宝くじが大当たりして大騒ぎになるというものだった。
ずっと叫んでいるわけでもないし、わざとらしい動きがあるわけでもない。ヒラヒラのドレスを着ている人も、変な化粧をしている人も出てこない。それどころか何度も大笑いしてしまうようなエピソードがあったかと思うと真面目に物語が進展していき、時には涙を誘うような場面もあった。
僕はいつの間にかその演劇の中に入り込んでいた。客席の照明が明るくなって他の客が帰り始めても、僕はまだ動けないでいた。
「エイト君」
隣でアンケートを書き終わった遠藤さんが声をかけてたところで我に返った。
出口のところに遠藤さんのお姉さんがいて彼女は近づいて何か話していた。離れたところで様子を見ていると、彼女が僕を指差していたのでお姉さんに軽くお辞儀をした。お姉さんがニヤけているので多分彼女をからかっているのだろう。演劇を見る前だったら、お姉さんの反応や彼女の対応に気が気じゃなかったけど、今はそんな余裕はなかった。
演劇の余韻で支配されていたからだ。