演っとけ! 劇団演劇部
 おかしな調子で笑うこの生徒は、演劇部と時を同じくして廃部になった元落語研究会(通称、落ち研)の鈴木君だった。
「相手にゃ不足はありません。どーんと胸を借りるつもりでかかってきて御覧なさい。返すときは利息もお願いしますよ。かっかっかっ」
 ああ、なんか別の意味で出鼻をくじかれた感じだ。
 後ろで一人だけ大笑いしている桜井さんもいるんですけど、笑いのつぼがだいぶ外れてはいませんか、お姉さま。
「まぁ、いいわ。こっちには綾奈もいるから利息の心配はご無用よ」
と、桜井さんが自分のではなく綾奈ちゃんの胸をポーンと(正確にはポヨーンだ)叩いて、鈴木君の話に合わせる。
 お姉さま、いくら仲のいい友達だからって
それはセクハラじゃないんですか。
 ほら、綾奈ちゃんも顔が真っ赤じゃないですか。
「かっかっかっ。うまいね、お姉さん。こりゃ、一本取られたな」
 はい、お後が宜しいようで。
 そのまま点も取られっぱなしの敵チームのおかげで、我がCCチームは2セットストレート勝ち。
 すんなりと2回進出を決めたのだった。
「どうする?」
「ここでよくない?」
「そうだね」
 女子3人組に言われるまま付いていき、体育館の出入口近くにある購買スペースの床に僕らは腰を下ろした。
「雨、さっきより強くなってるね」
 遠藤さんがそう言って、大きなガラス戸から校舎に繋がる渡り廊下に目を向けると、横殴りの雨がこれでもかという勢いでスノコを打ちつけていた。
 これでは教室に戻るのも一苦労だ。
 僕らの周りにも他の生徒がちらほらと集まってきている。購買が開くまでまだ少し時間があるから邪魔にはならないだろう。
 球技大会を一日で終わらせたいという学校側の都合上、昼休みがない今日は好きな時に昼ごはんを食べてもいいシステムになっていた。
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