演っとけ! 劇団演劇部
 中学時代の今井はどこの部活にも所属せず、ろくな練習もなしに『助っ人』としてほとんどの運動部の大会にだけ出場し、常に上位入賞を果たしていたというとんでもない(非常識な)経歴を持っている。そんなわけで、うちの高校に入ってからも部活の勧誘はひっきりなし。入学当初は今井のB組に運動部の列が出来たという。(はい、もちろん見てません)
通称『歩く運動部』と名付けられたこいつは、スポーツでは向かうところ敵なし。完全無敵のオールラウンドプレイヤーというわけだ。(以上、自称『学校の事情通』小島の説明でした)
「そっか、遠藤のチームメイトだったのか。いや、わりぃ。わりぃ」
 急に態度を豹変させたところから、この男も遠藤さんに気があるとみた。
 そうとわかればなお更あとに引くことは出来ない。
「おっ…」
「ちょっと、そんな謝り方ないでしょ! ちゃんと謝んなさいよ!」
 …そろそろ引っ込んでもらえませんか、お姉さま。
「だから何なんだよ、あんたは。関係ないだろ」
 全くそのとおりだ。
「だったら!」
(えっ?)
 僕は桜井さんに首根っこをつかまれて、そのまま立ち上がらせられ、舞台の真ん中に突然ねじ込まれた。
「こっちに謝んなさい!」
 あー、なんとも情けない状態になっています。
 桜井さんに襟元をつかまれたたまま、今井と向き合う僕。
 さすがに何か言わなきゃいけないのだろうけど、さっき思い浮かんだ言葉はどっかに飛び去ってしまっていた。
(でも遠藤さんもいるし、ここはビシッと)
と僕が彼女をちらりと見たのを今井は見逃さず、それで僕と同じように何かを察したようだ。
 それから少し考える仕草を見せた今井は
「ふぅん。よし、じゃあこうしようぜ。お前らのチームが俺らBBチームに勝ったら、正式に謝ってやるよ」
と、僕らに勝負を挑んできた。そして、すかさず
「その代わり俺たちが勝った場合、お前らのチーム女子3人を俺の専属マネージャーにする」
と遠藤さんと綾奈ちゃんのほうを指差した。
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