演っとけ! 劇団演劇部
 よりにもよって次の試合の相手、F組のFチームは、劇団演技部の音響スタッフでドレッド色黒のいかついジョーと、同じく最近仲間になったカンフーアクションばりばりの利一君率いるF組最強チームだった。
「おっ、相田先輩までナニやってんの?」
「先輩は監督なんだよ」
「玲、それは違うぞ。俺は名誉監督だ」
「ほぅ、それは手強そうですね」
 ああ、みんな勝手なことばっかり言ってるし。
「ちょっと玲! なに敵と仲良くおしゃべりしてんのよ!?」
 桜井さんの言い分も尤もだけど、球技大会の目的の一つは『他のクラスとの交流』だから、別に問題ない。というより学級委員としては推奨すべきことなんじゃないのか。
「ああ、ごめん。紹介するね。彼らが前に話してた劇団演劇部の…」
 遠藤さんの紹介が終わったところで、浅はかの代名詞のような小島が
「だったらさ、ちょっとわざと負けたりとか出来ない? 実は俺たちさ」
と、今の僕たちの状況を説明し始めた。
「なるほどな。とんでもねぇ奴がいたもんだな」
 ジョーも十分その部類なのだけど、今は突っ込んでいる余裕もない。
「彼らだったら、私のところにも来た。むろん断ったが」
「えっ、そうなの?」
 どうやら今井は利一君も狙っていたようだ。彼の運動神経は高校生のレベルじゃないのだから、当たり前と言えば当たり前。
(ぷぷっ、今井のやつ偉そうに『最強チーム』とか言ってたけど断られるじゃん、ダッセェ)
 って、その一人と戦うのか…。
「だからといって、エイト殿との勝負にイカサマするのも私の美学に反する」
 まぁ、利一君はそう言うと思っていた。
 ましてやジョーと利一君以外にF組のチームメイトもいるわけだし、易々とそんな話に乗るわけがないだろう。
「じゃ、そういうわけだから悪いな」
「正々堂々戦おう」
 うーん、味方だと心強いだけに敵に回るとやっかいな二人だ。
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