演っとけ! 劇団演劇部
 決勝に行く前に負けてしまいそうじゃないか。
「はい、集合」
 どこからか持ってきたパイプ椅子に座る相田先輩の前に集まる僕らCCチーム。
「残念ながら時間の都合上、特訓は出来なかった」
 当たり前だ。
「ともすれば、あとお前らが勝てる要素といったら一つしかない!」
 いつのまにかサングラスに付け髭をつけている先輩に、ダメ元で聞く。
「何ですか?」
「友情パワーだ!」
 それはもういいから。
 やっぱりそうですよね、とはしゃぐ桜井さんは、この際もう放っておく事にする。すると御手洗君が
「じゃんけんが一番弱いのって誰ですかね?」
とまた突拍子もないことを言ってきた。
「それはもちろんエイトに決まってるだろ」
 先輩も無根拠に失礼なことを、
「どうしてやってもいないのに、そんなこと言うんですか!?」
「じゃあ、やってみるか?」
 じゃん、けん、ぽん。
 硬く握った僕の握りこぶしは、残り6つの手の平を前にあえなく敗退した。
「じゃあ栄斗君にお願いしよう」
 御手洗君の言っている『お願い』とは、最初にサーブ権を決めるジャンケンのことだった。
 予想通りFFチームの代表にも負けて戻ってくると
「あっ、そうか!」
と遠藤さんが一人納得したように手を叩いた。
(どういうこと?)
 僕を含む他のみんなはハテナマークを付けたまま、利一君のサーブから試合が始まった。
 いつもの蹴りとは違い、普通に飛んでくるボールを遠藤さんがレシーブし、御手洗君がトス。そして桜井さんのアタックでまず僕らが先制した。そして、試合開始から40分後。
 ゲームは予想外な争いを繰り広げていた。
 数字をめくって点数を示すボードは
『34―34』になっている。
 まだどちらも1セットも取っていない。
< 96 / 109 >

この作品をシェア

pagetop