演っとけ! 劇団演劇部
 誰もが諦めかけたその時
「うおおおおっ!」
 周りを見ずボールに向かって走る姿が目に映った。
 小島だ。
 隣の試合のボールを頭に受け、更に隣のコートに突っ込みながら、アタックする勢いで打ち返す。
「おりゃあっ!」
 ズダダダダンッ!!
 ステージに激突した音が体育館に響く。
 そして、奇跡的に僕らのコートまで戻ってきたボールは、まさに桜井さんに向かって飛んできていた。
 しかし、今までよりもボールの滞空時間が長かった分、利一君もジョーも準備万端で待ち構えている。
 御手洗君の打ちやすいトスでもないし、いくら経験者の桜井さんでもすんなりコートに決めることは難しいかもしれない。
(あっ)
 僕だけじゃなくて、全員が目を疑った。
 桜井さんに向かって飛んできたボールを、遠藤さんがハエ叩きのようにポンッと相手コートに落とした。
 ピッと審判の笛が鳴る。
「よっしゃ」
 ひっくり返ったままの小島がガッツポーズを取ったまま崩れた。
 体育館に歓声が沸く。
 そして、試合はそのまま35―34の僕らの勝ちで終わった。
 本当ならあと1分ちょい残っていたはずだけど、その後すぐに小島がステージの壁にぶつかった痛みを大げさに訴え、その時しおらしく痛みに耐えていた綾奈ちゃんに女子二人が気づき、試合は中断されてタイムアップになったのだ。
「いやぁ、負けたぜ」
「ナイスファイトでした」
 試合が終わってジョーと利一君が明るく声をかけてくるも、僕は気が重かった。チーム内で二人もケガ人が出てしまったのだ。
 女子3人と小島は保健室に行ってしまい、僕と御手洗君とさっきの試合で野次しか飛ばしていなかったコーチだけが残っていた。
「これからどうします?」
 御手洗君が今後のことを相田先輩に相談すると
「別に問題ないだろ。欠員は原因を作った人間が埋めればいいことだ」
と、先輩は目の前に立っている二人をあごで示した。
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