クールな国王陛下は若奥様にご執心
 姉であるネルはこの国の王太女であり、近い将来この国を継ぐことになる。いずれリーレは国内の有力貴族と結婚し、そんな姉を支えていくつもりだった。他の国と婚姻関係を結べるほど、この国は大きくはない。
 豊かではないが、平穏で愛すべき祖国。
 レスレイラ王国がリーレのすべてであり、父や母、そして姉のように生涯を祖国で過ごすと信じていた。

 この大陸にはレスレイラ王国の他に、四つの国があった。
 中央に位置する大国、カレリア王国を筆頭に、レスレイラ王国の隣国であるメーオ王国などがあったが、リーレの祖国であるこの国は、その中でも一番小さな国だ。
 だがそのお陰か領土争いの戦乱などにも巻き込まれることはなく、いたって平和な日々が続いていた。
 出兵には多額の費用が掛かる。この国には、そこまでして手に入れる価値はないのだろう。
 覇権争いが続く大陸の中で、まるで見捨てられたかのように静かな国。
 平和は何よりも貴重なものだ。それを与えられた幸運に、レスレイラ王国の者は感謝していた。
 だがその平穏がふいに崩れた最初のきっかけは、この穏やかな春の日に起こった。

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