クールな国王陛下は若奥様にご執心
 部屋に飾るために、咲いていた花をいくつか摘み、それを自ら手に取って部屋に戻ろうとしたリーレは、あまり大きくはない王城の入り口が慌ただしいことに気がついた。何が起こったのか、普段は聞くことのない叫び声まで聞こえてくる。
 その緊迫した様子に、リーレは思わず足を止めた。
「何があったのかしら……」
 入り口とはいえ、王城で叫び声がするなど只事ではなさそうだ。
 不安そうなリーレの声に、侍女達が彼女を守るようにして寄り添う。だかそんなふたりの顔も、緊張で強張っていた。
「……部屋に戻りましょう」
 摘んだばかりの花を手にしたまま、リーレは静かな声でそう囁いた。
 もし本当に何か事件が起きたのだとしたら、ここで騒ぎ立てれば邪魔になってしまうだけだ。今は、警備された部屋で大人しくしているのが一番良い。何か起きたのか知りたくなる心を抑えて、リーレはそう言うと、侍女とともに自分の部屋に急いだ。

 あの時、何が起こっていたのか。
 リーレがすべてを知ったのは、その日の夜のことだった。

 陽が落ちると、昼間の晴天とは裏腹に天候は荒れ、嵐となった。
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