クールな国王陛下は若奥様にご執心
 初めて目の当たりにした姉の涙を、リーレはただ呆然と見つめた。
(お姉さま……)
 ロイドとは昨年、隣国のメーオ王国からこの国に来た姉の夫の名だ。
 彼は一応王族ではあるが、メーオ王国は王の子がとても多く、レスティも第七王子だった。
 向こうにしてみても、第七王子ならばレスレイラのような小国に婿に出しても惜しくはなかったのだろう。大きな問題もなくあっさりと婚約が決まり、去年結婚式を挙げたばかりだった。政略結婚ではあったが、ロイドは穏やかで優しく、これから国を背負うことになる姉をいつも支えてくれていた。
 そんな義兄の祖国に、何があったのだろう。
「カレリア王国よ」
 ネルは涙を溜めた瞳で、その国の名を告げる。
「メーオ王国はあの国と争っていたの。そして負けた」
「カリレア王国……」
 リーレは、告げられた言葉を呟く。それは最近、父や姉の口から良く聞く名前だった。
 大陸の中央に位置する大国だが、最初はこのレスレイラ王国のように小さな国だったという。それが周囲の国との戦争で勝ち続け、今のような大国になった。好戦的な国で、常にどこかの国と争っているような国だ。その国が今回、ロイドの祖国であるメーオ王国に刃を向けたのか。
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