クールな国王陛下は若奥様にご執心
「では、メーオ王国は」
 あの優しい義兄の国は、カリレア王国に滅ぼされてしまったのだろうか。震える声でそれだけ口にしたリーレに、ネルは俯いたまま首を横に振る。
「滅ぼされてはいないわ。ただ、あの国はカリレア王国の属国になってしまった。カリレア国王が要求したのは、毎年一定の金を納めることと、王太子を変え、もとの王太子を国外追放すること。メーオ国王陛下も、王族の方々も無事よ」
 それを聞いて、リーレは少しだけほっとする。過去の歴史から考えると、戦争に負けた国の王族が皆殺しになることも少なくないからだ。
 メーオ王国は金の鉱山があり、資金も豊富だ。多少の出費は何でもないだろう。それにあの国の王太子はとても優秀な人だと聞いていたから、国外追放は国王にとってかなり痛いかもしれないが、殺せと命じられたわけでもない。
 姉がここまで憔悴し、涙を流すほどの事態とは思えず、困惑する。
「あの男は……。今のカリレア国王は悪魔のような男だわ。負けた国に対して、王族を滅ぼしたり国を乗っ取るようなことはしない。でも、とても過酷な要求をするの」
「過酷な?」
「ええ。国王にとって一番大切なものを、わざと取り上げるのよ。王太子を頼りにしていたメーオ国王に対して、彼を追放するように告げたり、他の国には最愛の妃を離縁させて国に返すように仕向けたこともある。そして、私達にも」
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