【短】失恋 未練 涙の約束

「約束したから」



 拓海が私の手をぎゅっと握る。



「この先。誰かを好きになって、付き合って、振られて。もしも、これ以上恋をしたくないって思うくらいに一人だったら、一緒になろうか」



 また拓海が小指を立てて、私に笑いかける。


 中学生だった時の、丸坊主だった拓海の顔が重なる。泣いたまま笑うから、何だか可笑しくて。



『絶対に迎えに行くからさ、安心して恋してこいよ』



 拓海はまるで、旅立つ私を見送るみたいに言ってくれた。


 中学生で、まだ子供だと言ってもいいくらいに単純で何も考えていなくて。でも、それでも私は嬉しかった。


 幼なじみがいることがこんなに有難いものなんだって気づいた。


 ああ、そうだ。だから私は幼なじみ以上の関係にはなれない……いや、なりたくないって思ったんだった。

< 9 / 15 >

この作品をシェア

pagetop