【短】失恋 未練 涙の約束
「約束したから」
拓海が私の手をぎゅっと握る。
「この先。誰かを好きになって、付き合って、振られて。もしも、これ以上恋をしたくないって思うくらいに一人だったら、一緒になろうか」
また拓海が小指を立てて、私に笑いかける。
中学生だった時の、丸坊主だった拓海の顔が重なる。泣いたまま笑うから、何だか可笑しくて。
『絶対に迎えに行くからさ、安心して恋してこいよ』
拓海はまるで、旅立つ私を見送るみたいに言ってくれた。
中学生で、まだ子供だと言ってもいいくらいに単純で何も考えていなくて。でも、それでも私は嬉しかった。
幼なじみがいることがこんなに有難いものなんだって気づいた。
ああ、そうだ。だから私は幼なじみ以上の関係にはなれない……いや、なりたくないって思ったんだった。