欲しいのは、たったひとり。
なかなか理解が追いつかない私に、陽日くんはとどめの一言を言う。


「だから、これ七乃の部屋にある荷物の全部だって言ってんの」

「ふーん、そっか・・・・ってええええっっ!?」


な、なんということだ・・・・・・。


『なんということでしょう』なんて某番組のナレーションの人が言う言葉が頭に浮かんできて、それを瞬時に抹消させる。

あぁぁっ!BGMまで浮かんできたよ!
ダメだ、精神統一、精神統一っ!
あぁぁーー、青城寺七乃ぉぉーー!
私に戻れ、私!


────ふぅぅぅ
深呼吸、深呼吸。


と、街中でしたら必ず捕まりそうな行為をしている私を冷たい視線を送り、陽日くんは一言。


「どうしたの、七乃」


そうきたか。


「いいえ、なんでもありません」


私は落ち着いた口調で返すけど、
未だに私と陽日くんが同居することに信じられないでいる。


というか、どうしてそんなに陽日くんが落ち着いているのかがよく分からない。


なんて1人でいろいろ考えていたら、陽日くんが私の部屋の荷物が全部入っているというダンボールに手をかけていることに気づいた。


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