欲しいのは、たったひとり。
食品売り場の店内を見ていき、探していった。


レジで会計をしてもらい、袋に荷物を詰めて帰路につく。


「そういえばさ、陽日くんの家ってなんなの?」


うん。すごく唐突だったと思う。

でも、気になったから。


「あぁ、七乃には言ってなかったな。一応、俺のお父さんは財閥の社長やってるよ」


ぐほっ。ざ、財閥の社長・・・・。

まぁ、春学の生徒はだいたいそんな感じだし。見当はついてたかな。


ということは、陽日くんは財閥の御曹司・・・・ということなのか。


「それがどうかしたの?」

「いや、陽日くんって謎だからさ。これから・・・・同居?するんだし」

「なんで疑問形なの」


陽日くんはクスッと笑って、私の方を見た。


「案外親しみやすいんだね。陽日くん」

「そうか?」

「そうだよ。陽日くんに『好き』って言われた時から謎だったもん」

「そっか〜」


のんびりと返す陽日くん。


こんな陽日くんと同居するのか。
これからもっと陽日くんのこと知らないとね!


「陽日くん!これから私たち同居するんだから、お互いのことたくさん知っていこうね!」

「たくさんって、どんな?」


突然尋ねられて驚く。そこ聞きますかね?


「たくさんとは・・・・、好きな食べ物とか、嫌いな食べ物とか、趣味とか・・・・かな?」

「また疑問形になってるよ」


またクスクスと笑われてしまう。


「とにかく!たくさんとはそういうことなの!」

「はいはい」


めんどくさそうに返して、スーパーの荷物を肩にかけた陽日くん。


帰り道では、陽日くんとたくさん話をして
寮へと帰った。









「ひぃ!ちょっと!沸騰してるから火切って!」

「え?あぁ、うん」

「ちーがーう!そこはとなりのIHじゃん!
なに勝手に火つけてるの!」

「あ、鍋のふた?────あっっっっつ!」

「ばかじゃないですか?」

< 70 / 110 >

この作品をシェア

pagetop