欲しいのは、たったひとり。
「よしっ、出来たよ!」
私はソファに座って本を読んでいた陽日くんに声をかけて、IHの火を止める。
陽日くんはすぐに本を閉じ、キッチンへやってきた。
「俺ができることはない?」
「えっとー、じゃあカレーをお皿に盛り付けてくれる?」
「わかった」
これなら陽日くんにもできるだろうと頼んだ。
私はお皿をふたつ食器棚から取り出し、炊飯器で炊いた白ご飯をよそって、陽日くんに渡す。
「ありがと」
そう小さく言って、陽日くんはカレーを盛り付けた。
親のような目線で見てしまって、ちょっと面白くなってきた。
「うん、いいんじゃない?」
「できてるの?」
「うん、できてるよ」
陽日くんはそんなに心配なのか、何度も確認してきた。
「まぁ、食べるのは私たちなんだし盛り付けはできてるから食べよ!」
「うん、お腹すいたから食べたい!」
陽日くんはキラキラとした笑顔でそう言って、カレーを盛り付けたお皿をふたつ、ダイニングテーブルに運んでくれた。
私はカレーを煮込んでいる間に作ったサラダを冷蔵庫から取り出し、食器棚からスプーンと箸を取り出して運んだ。
準備も整い、2人で向かい合い、手を合わせて「いただきます」と声を合わせた。