欲しいのは、たったひとり。
そっか。なんか、触れてはいけないワードだったみたい。


これから気をつけないと。



確かに、私が令嬢という立場だった時、「あなたは令嬢だもんね」と周りの人間に言われて、あぁ、私は“青城寺 七乃”としてではなく、“令嬢”として見ているんだと思っていた時期があった。



でも、お父さんに「きっと、お前のことを1人の大事な人として分かってくれる人がいるよ」と言われ、
嬉しくなったのを思い出す。



じゃあ、この言葉を陽日くんにさずけよう!




「きっと、陽日くんのことを1人の大事な人として分かってくれる人がいるよ」



「・・・・・・・」



陽日くんは、私を見たまま固まっている。


ど、どうしたの!?



と、聞こうとしたが。




「わっ・・・・・・」



手を引っ張られ、ぎゅっ。


と、抱きしめられる。




「あ、あのぉー・・・」



小さく声をかけても、何も応答してくれない陽日くん。




ど、どうしよう。この状況。



すると、強く抱きしめられ、私の胸はどんどん
どき、どき、と加速していく。

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