欲しいのは、たったひとり。
【陽日side】





どうしたんだろう、七乃。



いつもはこの時間に登校してくるはずだけどな。





俺は、黒板の上に固定されている時計を見上げながらそう考えた。





七乃には俺が見たところ友達がいないし、クラスメイトとも話していなさそうだから、聞く人が分からない。




俺の席は廊下側の1番後ろの席だから、廊下を眺め放題。




つまり、隣のクラスの七乃が登校してくるのを見られるっていうこと。




多分、このことに七乃は気づいていないけど。





それにしても、来るのが遅い。




もう一度時計を見てみると、朝のHR開始のチャイムまであと3分。




間に合うのかな、七乃。





と、そこで俺はまた廊下に目を向けると昨日七乃にいじめをしていた女子が教室に向かうのを見つけた。




その表情は、全員とてもスッキリしたような表情で、なにかしたんだと悟った。




──────七乃。




きっと、七乃だ。
七乃になにかしたんだ。




俺は、いてもたっても居られず席を立ち、朝のHR開始のチャイムを聞きながら教室を飛び出た。


< 88 / 110 >

この作品をシェア

pagetop