欲しいのは、たったひとり。
今、俺がいないどこかで七乃が泣いていると考えたら、胸が苦しくなる。



ても、どの教室を探してもいないのはおかしい。
どこかで見過ごしたのか?




考え込んでも、思いつかなかった。



と、そのとき。




────キーンコーンカーンコーン




俺の焦る鼓動とは裏腹に、のんびりとチャイムが鳴った。



このチャイムは朝のHR終了のチャイム。




つまり、10分後に一限の授業が開始するということで。





現在地、2階踊り場。





俺は考えるよりも先に足が動いて走り出していた。





あの3人組のいる教室に。





でも、教室の前の廊下に彼女たちはいた。





俺はすぐにそこへ向かった。
自分のクラスの奴らや他クラスの奴らの目を無視して。





その3人組の中心にいたリーダーの女子の、ブレザーの襟を強く引っ張り、俺の顔に近づける。




「きゃっ」




学校中を走って、息が整わないけど無我夢中だった。




「お前、七乃をどこにやった!?俺の七乃をどこにやったんだ!早く教えろ!」




「·······わ、私は、何も知らないで、す」
< 90 / 110 >

この作品をシェア

pagetop