欲しいのは、たったひとり。
俺の血管が切れるかと思った。




彼女は俺の向けている瞳から目を逸らして、そっぽを向いていた。




「そんなわけないだろ!早く教えろ!」




廊下の壁に押し付けて、声を張り上げた。





すると、彼女は俺の腕から離れ、すぐに頭を下げた。




「すっ、すみませんでした!」




彼女の瞳を見ると、うるうると涙が溜まっていた。





俺が、泣かせたんだ─────。





「急に桜野くんに近づいて、屋上で話したりしてるのを知って、すごく嫉妬してしまったんです。それで私の気持ちに歯止めが効かなくなってしまって.......」




ぽつりぽつりと話し出した彼女。




どんどん彼女の瞳に涙が溜まって、とうとう涙が零れてしまった。




なんてことをしているんだろう。
好きな女のために、他の女を泣かせてしまって。




その罪悪感でいっぱいだった。




「そ、それで私は、朝東条さんを連れ出して、第三会議室の中の小さい部屋に閉じ込め、ました」




第三会議室は職員室の近くにあって、今は使われていないと聞いたことがある。




しかも、第三会議室は春学の職員しか使えない。
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