ダイヤモンドの君は笑う
気持ちがわかる。
その言葉に、胸の奥がどろっと熱く滾った。
会ってまだ1週間やそこらの人に、簡単に自分のことがわかると言われたことに、腹がたった。
「……だからなに?」
努めて冷静に言ったはずなのに、自分でも驚くほど低い声が出た。その声に、私の表情にピクリと震え、怯える佐伯くん。
「え……ご、ごめん。今の忘れて……資料ありがとね」
佐伯くんは、そう言うと不自然なほどノートに顔を近づけて予習を再開する。
それを尻目に見て、私は自分の席に戻った。
1人にして欲しいと頼んだのは私。だけど1人にして欲しいと言うことを誰かに共感して欲しいわけではなかった。
勝手に共感して、勝手に仲間意識を持たれることは、付きまとわれているのと同じだ。
煩わしい、佐伯くんに対して、確かに抱いた感情だった。
「ミカちゃん?…ミカ…ミカ!」
名前を呼ばれ、パッと顔を上げると、若宮がいた。相変わらず距離が近い。
伸びた若宮の前髪が、顔に当たってくすぐったかった。
「どうしたのミカ。怖い顔してる」
「してない。離れて」
「やぁだ。今日初めてミカちゃんとの会話。もっと続けていたいの」
「はぁ?」
「分からない?ミカが足りないんだよ」
捉えようによっては、誤解されかねない危ない会話。恋人でもない男女でこんな会話をするだろうか。
キッと若宮を睨む私。
睨まれて、さらに笑顔を浮かべる若宮。
まさに平行線。
こんなことを一週間も続ければ周りも私も麻痺してくる。
私は諦めて、本を読むことにした。