ダイヤモンドの君は笑う
「ミ〜カちゃん!」
授業が全て終わるやいなや、笑顔で私の手を握る若宮。
私は容赦なくその手を払いのけると、カバンを手に教室を出る。
本のことがあるものの、若宮の思惑通りに動くしかない自分が嫌だった。
そんな私の心を知ってか知らずか、特に傷ついた様子もなく犬のように私の後をついてくる若宮。
とにかく、一緒に帰りさえすればいい。道草せずまっすぐ最短距離の道を行けば徒歩でも15分で着くだろう。
「ねぇ、甘いの好き?クレープ屋寄ろうよ!」
「却下」
寄り道さえ、しなければ……。
「えぇーなんで?楽しく帰ろうよ!」
「無理。17時には家に着いてないと」
腕時計を確認すると16時過ぎ。
このまま帰れば間に合うだろう。
「なにがあるの?」
「家庭教師」
詮索されるのは好きじゃないが、言わなければクレープ屋に無理矢理連れていかれそうだ。
正直に答えたほうがいいと、本能が言っていた。
「え、それって……オトコ?」
舌打ちする。
今日の若宮は、はっきり言って嫌いだ。
佐伯くんのことといい、家庭教師といい、自分の行動を制限されるのは我慢ならない。
「聞いてないし!俺」
「言ってない」
「やめなよ家庭教師。遊べないじゃん」
「遊ばない」
「なんで家庭教師?勉強わかんないなら俺が教えるよ?」
「遠慮しとく」
「友達サービスでタダで教えるよ!」
「いい加減にして!」