ダイヤモンドの君は笑う
驚いた若宮が、立ち止まって私の顔を見る。
「ひとりにしてって、何度言ったらわかってくれるの…」
自分から願って、ひとりでいる私。
それは、常に周りに誰かがいる若宮には理解しがたいかもしれない。
1人は嫌だ、常に誰かと一緒にいたいと言っていた若宮の言葉を否定する気はない。
「……イライラする。必要以上に構ってこないで」
誰かと一緒にいたいなら、いればいい。若宮の言う“誰か”は、私じゃなくたっていいはずだ。
「……返して」
若宮が私を求めなくても、若宮を求める人はどこにだってたくさんいるのを私は知っている。
「返して。本、今すぐ返して」
そうだ。初めからそう言えばよかったんだ。曖昧な態度をとるから、若宮に付け込まれる。
これからは、はっきりと拒絶すればいい。
私の剣幕に押されたのか、若宮は無言のままカバンから私から奪った本を取り出した。
少し躊躇って、私に本を手渡す。
本が無事手元に帰って来たことに安堵し、私は若宮に背を向けた。
もう、並んで帰る必要はない。
そう思って、角を曲がろうとした瞬間、けたたましいクラクションが私に向かって鳴り響いた。