ダイヤモンドの君は笑う
ーーー

「おぉーここがミカちゃんのお家!」


なんで、こんなことに。
私の目の前には、片足を引きずりながらも、リビングでキラキラと目を輝かせる若宮。


「いやぁ、ごめんねぇ〜。お邪魔する気は無かったんだけど、痛くて痛くて!あっ、お構いなく!俺好き嫌いないから!!」


白々しく怪我した右足と腕を私に見せつける若宮。怪我人じゃなければ、手が出ていたかもしれない。


「座って、怪我したところ見せて」


「えぇ〜…ジュースは?お菓子は?」


「今すぐ帰る?」


「いえ!手当てお願いします!」


救急箱から消毒液とガーゼ、包帯を取り出す。若宮がなにかぶつくさ言っているのを無視して時計を見ると30分を超えていた。


早くしないと、家庭教師との約束の時間が来てしまう。


「やさしくしてねん♪」


傷は思ったより大したことなかった。それでも消毒液に必要以上に怯える若宮に、処置が手間取ってしまう。


「動かないで!」


「ムリムリムリ!
ぎゃあ、染みるーー!!!」


嫌がる若宮をなんとか抑えながら、なんとか処置を進めていく。そして最後に顔の傷に絆創膏を貼って、救急箱を閉じた。


「さ、帰って」


「言うと思ったけど、鬼!」


もうこの際鬼でもなんでもいい。


「家庭教師が来るの。
若宮がいちゃマズイでしょ」


「でも…まだ傷痛い……」


若宮の言葉に、私は無意識に頭を掻いた。クラクションが鳴った時、固まった私の身体を後ろに引いた若宮。


勢いよく引かれたものだから、私はバランスを崩して倒れ、若宮を下敷きにしてしまった。


クルマとの接触は全くない。


それでも、怪我の原因が私であるのは変えようもない事実で。
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