ダイヤモンドの君は笑う
切望という言葉が、頭の奥に浮かんだ。
そうだ、若宮はいま私に願っている。そばにいることを許してほしいと、会ってまだ一週間の私に対して、そう言っているのだ。
頭を乗せられた肩が重い。
停止していた脳が、今は驚くほどに冷静で。まるで今この状況を俯瞰してみているかのようだった。
ひとりになりたいことと、一人は嫌だというのとどうしてイコールで繋がるのか。謎かけのような若宮の言葉は冷静になってもわからないままだった。
めんどくさい。
だから嫌なんだ。必要以上に人と関わるのは。
若宮が私に対して、なにを求めているのか知りたいとも…わかりたいとも思わないのに、一切を拒否して頑なに突き放すことも、距離を置くこともできない。
どうすればいいのか、わからない。目の前にいる若宮を突き飛ばして頰を引っ叩くべきなのか、それとも…。
インターファンが再び鳴った。
続いてポケットに入れていた私のスマホも鳴り出す。
シンとしたリビングに鳴る二つの音は、嫌に耳の奥にこびりつくように響いていた。
「ごめん……」
不意に肩が軽くなったかと思うと、頭の上で声がした。
足音が離れていく。
私は何事もなかったかのように、玄関に向かった。