ダイヤモンドの君は笑う
「まぁいい。話は以上だ。
もうじきHRだから自己紹介、テキトーに考えとけよ」
「それだけですか?」
「あ?それだけだ」
本当にもう言うことがないのだろう、先生はまるで子犬を追い払うかのように、あっちへ行けと手を振った。
先生らしからぬ、傍若無人さ。
私は最低限の礼儀として心のこもっていない一礼をし、職員室を出た。
見慣れない校舎。
窓の外から見える自然豊かな景色も、綺麗と思うよりも先に以前自分がいたところとかけ離れ過ぎて、異質だと思ってしまう。
どこからか聞こえて来る生徒たちの声も、吹奏楽部の音色でさえも、耳が以前と違うと言っている。
ああ、嫌だ。気分が悪い。
だから…最初から
「…I didn't want to come such place.」
こんな所、来たくなんてなかったのに。
「It didn't want to be away.」
離れたく、なかったのに…
目の奥がジンと熱くなった。
涙が込み上げて来ているのだと、いやでもわかった。零したくなくて、上を見上げる。
泣くな。そう自分に強く命じた。
「〜♪ …へぇ」
軽やかな音が廊下に響いた。
口笛の音。
見ると、背の高い男が立っていた。耳にはいくつものピアス。明らかに地毛ではない、不自然なほど綺麗な色の入った金髪。気崩れされた制服。
「朝から美人の涙見られるなんて。久々に学校に来た甲斐があるねぇ〜」
金髪頭は、そう言ってまた楽しそうに口笛を吹く。
からかわれている。
そう思った瞬間顔が熱くなる。
直ぐそこまで来ていた涙は引っ込んで、代わりに目の前の男を睨みつける。
「泣いてません」
「うっそだぁ」