ダイヤモンドの君は笑う
「それで、実際はどうだった?」
「一人に、してくれなかった」
一週間。一週間だ。7日もの間、若宮は毎日私の横にいた。他のクラスメイトが転校生という私を物珍しく思い近づいて来ることもあったが、その度若宮が私を背に隠して、あしらっていた。
私が対処していたら、生意気だと喧嘩になってしまうだろうに、若宮を前にした人たちは皆笑顔で若宮に手を振って去っていくのだ。
「そう……ねぇ、実花」
メガネを外した彼が、ゆっくりと私の名を呼んで前髪を搔き上げる。
彼の額にある傷跡に、胸の奥がツキンと痛んだ。
「ひとりがいいなら、なぜ俺に家庭教師なんて頼んだの?」
童顔の顔。
メガネを外すと、まるで幼い頃の彼そのものだった。
「いくら長く外にいたからって、日本語は十分理解できてるし、勉強もあっちでちゃんとしてたはずだよ」
一歩、彼との距離が縮められる。
触れてないのに、彼の熱が伝わって来る気がした。
彼の首筋から見える銀のチェーン。
まだ持っていてくれたのかと、泣きたい気分になった。
「家庭教師なんて理由なんてなくても、俺は君が帰って来ると知ったときから……君を一人にする気なんてなかったよ」
顔が近づいきて、思わず目を瞑ると、瞼に柔らかな感触がした。
「 I won't separate.
悔しいよ。その場にいたのが俺じゃないなんて」
苦しげな吐息を感じて目を開けようとすると、見ないでくれというように乱暴に抱きしめられる。
昔はあまり変わらない身長だったのに、10年会わないだけで、これほどまでに立派な青年へと変わってしまった。
力強く抱きしめられ、服の上からでも引き締まった体の感触がわかった。
「つむ、ぎ…お兄ちゃん」
そういうと、さらに腕の力が強くなる。
「I have not thought you're my younger sister.」
ドアの外で、小さな物音がした。