ダイヤモンドの君は笑う
17年前、私はこの町の小さなアパートで生まれ、7歳までを過ごした。
物心ついた時にはもう父親はいなかった。母はいわゆるいつまでも若く女でいたい人で、毎夜知らない男の人と、どこかへ出かけてしまう。
「8歳の時、私は叔父に預けられた。アメリカの叔父は、私によくしてくれた。土地も、人も、文化も、私に合ってたの…何もかも」
寂しい幼少期、今の時代そう珍しくはない。
「ミカが一人に拘るのは?」
ドアに軽く額をぶつける。
どうして昔の話しを若宮にしているのか、わからなかった。
それとも私は誰かに話したかったのだろうか。
一人にこだわるわけ…
本当のことを言ってしまおうか。
信じるだろうか…
軽蔑するだろうか。
軽蔑させるべきなのかもしれない。
私は、大きく息を吸って、吐き出した。ドアノブを握る手に、力が入る。
「I killed a person.」
「え…」
ドアを力強く押した。
若宮の身体がドアに押され、体制が崩れる。その隙を見逃さず、私は力任せにドアをこじ開けた。
「……だったらどうする?」
床に転がる若宮を見下ろして、私は問うた。
若宮は数回瞬きを繰り返し、私に向かって手を差し出す。差し出した手は私には届かない。
「……ダウト」
手のひらが拳銃の形になって、私の胸を指差した。